歯科医療関係者の中には「訪問診療」を始めるハードルが高いと感じる方々もいらっしゃると思います。
何を準備すればいいのか、そもそも学生時代に習ってもいないし見たこともないからイメージもつかない…
このブログでは「訪問診療に興味はあるけど今更イロハから聞ける人がいない!」という歯科医療関係者の方々のために、お役に立てそうな情報も配信していけたらと思っています。
今回はまずモノの準備から。車やポータブルユニットなどの大きいものから、実際に訪問をやっていないと分からないけど実は必須なものなどを挙げていきます。
機材系
訪問車
診療の合間に近くを回るくらいなら自転車でも行けますが、やはり天候に左右されずに回れる、荷物をたくさん積めるという点で訪問診療を行うのに欠かせない訪問車。
都内はそもそもクリニックに駐車場がないパターンも多く、車を買うのはハードルが高いですが、郊外で開業されていて訪問診療を考えている場合は訪問用の車を1台用意するのはトータルで考えればコスパ的にも悪くないです。
訪問歯科診療はドクター、衛生士、コーディネーターの3人で回るのが基本です。
2人でも回れなくはないですが、やはり物品の準備片付けや事務作業など2人だと結構大変で時間もかかります。
ある程度患者数が見込める地域では3人体制で回ることをオススメします。
荷物がたくさん入ること、3人乗れることを考えると「軽ワンボックス」タイプがオススメです。
スズキ「エブリイワゴン」、日産「クリッパー」、ダイハツ「ハイゼッドカーゴ」など。
私は普段ハイゼッド、エブリイの後部座席に乗っていますが、乗り心地いいです。荷物をたくさん積んでも足元は窮屈でなく、普通に寝られますし、動いている車内でカルテや技工指示書も書けます(笑)
私は車に全く詳しくないので、そもそもワンボックスが何かもよく分かりませんでした…
もし車に詳しくない方いらっしゃれば、↓の記事がわかりやすくてオススメです。
ポータブルユニット
訪問で処置を行うのに使うポータブルユニット。
女性でも持てる10kg前後のものが販売されています。ある程度狭い家でも置けます。
水も出ますし、吸引もできますが、バキュームの吸引力は機械によって異なります。訪問診療を必要としている患者さんは誤嚥の危険もある方が多いので、バキュームの吸引力は妥協しないほうがいいと個人的には思います。
ナカニシ、オサダのサイトを見ると新品フルセットで100〜150万くらいです。
ナカニシは使っている(別の職場で使っている機械はメーカーが分からない)のですが、吸引力が弱くて困ります…
でも小さいカリエスなら、次に説明するエンジンに5倍速つければ水なしで処置できますし、ユニットが必要なのは主に形成関連と考えると、嚥下機能めちゃめちゃ悪い人に形成なんてしない…と考えればバキュームが弱くても何とかなるのですが。。
少なくともナカニシのユニットに関しては丸3年働いていて故障は聞いていません。
もう1ヶ所のバイト先のユニット(ナカニシではない)はこの前故障していましたが、恐らく長年使っている感じでしたし、他の号車のユニットがしょっちゅう壊れているという話もあまり聞きません。
ポータブルエンジン
主に義歯調整・作成時にストレートを装着して使いますが、5倍速やコントラをつけて簡単なう蝕治療にも使います。
5倍速は無水なので当然ヘッドがかなり熱くなります。時々冷やしながら使います。歯には削りカスがつくので、濡らした歯ブラシやスポンジブラシでぬぐいながら削ります。
つまり最悪ポータブルエンジンさえあれば処置はほぼ全般できるので、「最低限の準備でとりあえず訪問診療を始めてみたい」という場合はユニットの前にまずこちらを購入するといいと思います。
私が勤務している訪問歯科のクリニックはいずれもナカニシのVIVAMATE G5を使っています。使用感も問題ないです。フットコントローラーは使ったことないですし、なくても問題ないです。本体だけならかなりコンパクトです。充電式でバッテリーは1日余裕で持ちます。
価格はナカニシの公式カタログで14万5000円です。
ポータブルレントゲン
これも訪問には必須です。やはりデンタルがないと診断できないので。
調べたのですがカタログを資料請求しないと値段は分かりませんでした。すみません。
持ち運びやすさや軽さ・コンパクトさが大事です。
フィルムは意外とアナログの方が現地に持ち運びができるしいいのではないかと思っています。IPを院内用と訪問用と分けて何枚も買うのもお金が勿体無いかと思いますし、訪問だと角度が難しくて失敗しやすいので、フィルムを多めに持っていけるのも利点です。
内視鏡セット
これは嚥下の往診依頼も受けることを検討しているクリニック向けです。
内視鏡はpentaxかマチダがオススメです。オリンパスより細くしなやかなので、患者さんの感じる違和感がやや少ないです。
内視鏡+内視鏡とPCを繋ぐカメラ+PCが基本セットです。大学の関係でpentaxに以前見積もりを依頼した時はカメラ+PCで約80万、内視鏡も含めると150万前後と思われます。
実は重要な物品
クーラーボックスと水筒
最近は暑くなってきましたが、夏は訪問歯科にとっては過酷な時期。
10〜15分移動→処置で停車、を繰り返すので車内は冷え切らず、常に暑い状態です。
そのため、物品にも注意が必要です。ユーティリティワックスなど、ワックス類は溶けるので、クーラーボックスがあると便利です。職場によっては技工物も入れられるサイズにしているところもあります。
またスプレー缶類、ガスやアルコールは管理に気をつけて下さい。
私の職場の1つでは車内で可燃物のボヤ騒ぎがありました。それからはスパチュラなどが完全に冷えていることを確認、ガスやアルコールは最低限しか積んでいません。
また、アルジネート印象の際に使う水がぬるいこともありますので、小さい魔法瓶に入れた氷水を持っていった方がいいです。
うっかり忘れてお家でお借りすることもあるのですが、この前とある患者さんのお宅で「作ってない」と言われてしまいました…やはり持っていくに越したことはないですね。
スリッパ
こう言ってはなんですが、全てのお家がキレイなわけではありません。
床がベトベトしている家、ゴキブリが出る家もあります。
そういう家に靴下1枚で上がるのは誰でも抵抗があると思うので、スリッパを常に車に積んでおくと良いです。
できればクロックスのような穴が空いているものではなく、つま先が覆われているタイプがいいと思います。
ケアバッグ
病院や施設を回る時、衛生士さんと二手に分かれることもあります。
その際衛生士さんが回りやすいよう、ケアのグッズをひと通りまとめたバッグやカゴがあると便利です。
歯ブラシ類、フロス、ケア用ジェル、入れ歯用の歯磨き粉もしくはジェル、スポンジブラシ、ワセリン(口唇の保湿用)、口腔ケア用ウェットティッシュ、ポケットティッシュ、ガーゼ、洗口液、紙コップ、ライト、消毒用アルコール、ゴミ袋など。
ポケットが多い小さいハンドバッグ型のものだと物を管理しやすいです。
イメージはこんな感じ(色はもっと地味なもので)↓
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訪問て荷物が多くて準備するだけでも結構大変なんですよね…
でも一回準備してしまえば、積んだままにできるものも多いので、最初の頑張りが大切です!
今後は訪問診療を避けて通れない時代になるのではないかと私は思うので、何が必要か知っているだけでもアドバンテージになると思いますよ!
訪問に欠かせない書類などに関しても今後書いていく予定です。