訪問歯科医えるさの日記

フリーランス訪問歯科医が診療していて気づいたことを書いています。

訪問歯科でできることは?対象は?費用は?

【2020/5/28修正】

今回は、訪問歯科が身近にない方に向けて、訪問歯科で何ができるのかをお話ししようと思います。

 

このブログを見て、

「訪問歯科ってぶっちゃけ何?!」

と思っている方もいらっしゃると思います。

 

地方にお住まいの方はひょっとすると意外に思われるかもしれませんが、都内では訪問歯科診療を知らない方も沢山いらっしゃいます。(特に23区内)

 

私の職場も手広くやっているところは隣県のクリニックです。医局から回ってくるバイト募集も都外のクリニックが多いです。

 

なぜ都内で訪問歯科が広まらないかはまた別の機会にお話ししたいと思いますが、都内在住の私が仕事の話をすると「そんなものがあるんですか?!」と訊かれることが多いので、訪問歯科を初めて知った!という方に向けて、どんなことができるのかをお話ししようと思います。

 

 

 

 

 

訪問歯科では何ができるのか

 

その答えはズバリ「全部!!」です。

 

具体的には口腔ケアから入れ歯の作成、虫歯治療や嚥下機能検査まで、お口の中のこと、食べることに関することは全て対応しています!

 

以下で、ひとつずつ具体的に治療の様子をお話しします。

 

  

口腔ケア

「ただの歯磨きだけで歯医者さんに来てもらえるんですか?」

 

はい!もちろんです!!

 

要介護の方は歯磨きが不十分になりやすいです。

たとえ認知機能は正常であっても、年をとるだけで手先の動きは鈍くなります。

障害があればなおさらです。

 

歯医者さんに行って「歯ブラシをなるべく小刻みに動かすようにして下さい」と言われたことはありませんか?

 

歯と歯の間や歯と歯茎の間など、汚れ(プラーク)が付着しやすい部分は、歯ブラシを小刻みに動かさなければプラークが十分に取れません。取れずに放置すれば虫歯や歯茎の腫れの原因になります。

 

手がうまく動かないお年寄りが「歯ブラシを小刻みに動かす」のは至難の業です。

 

さらに、高齢者は唾液量が減ったり、歯茎が下がったりして虫歯や歯周病のリスクが高いので、プラークが付いたまま放置していると虫歯や歯周病になり歯を失うリスクが高いのです。

 

認知症の方を在宅介護されているご家族の方も、歯磨きへの拒否があったり、他のことで手一杯でなかなか歯磨きまで手が回らないという方も多いと思います。

 

「ただの歯磨きで歯医者を呼ぶなんて…」と思わず、訪問歯科を利用して下さい!

他人を頼ることは恥ずかしいことではありません。自分を守るため、周囲の介護者を守るためにも専門職を利用しましょう。

 

 

入れ歯作成

「家にいて入れ歯の型取りとかできるんですか?」

 

できます!!必要なものは全て持っていきます!!

 

全て持って行く、と言っても、ほとんどの場合、型取りに使う粉(ピンク色のやつです)と練るための小さいボウル、金属製の既成トレー、プラスチックトレーを削るためのポシェットに入るくらいの大きさの器械、別の工程の時に手の大きさくらいの小さいバーナーを使うくらいです。

 

ご自宅のリビングでいつも座っている椅子に座って、入れ歯を作れますよ!

なんなら普段は見られない入れ歯作りの工程を見られるので、様子を楽しんで下さる患者様も多いです(笑)

 

 

虫歯治療

「家で歯を削るなんて流石に無理でしょ?」

 

できます!!ポータブルの機械があります!!

 

最近の医療の機械は進歩しています。女性でも持てる大きさのポータブルの歯の切削器があり、家でも歯科医院さながら歯を削ることができます。水も出ますし、吸ってもくれます。

 

誤嚥の危険が高い方には、当然水を出さずに治療することも可能です。

 

さらにポータブルのレントゲンもあるので、家にいながら正確な診断が可能です。

 

 

嚥下機能検査

これに関しては「え?何それ?」「そんなこと歯医者さんができるの?」という意見もあると思います。

 

歯医者も嚥下内視鏡検査できます!!

 

誤嚥性肺炎」という言葉を聞いたことがある方は多いと思います。

 

誤嚥(気管に食物が誤って入ってしまうこと)しているかの診断、機能改善のためのリハビリの方法を考えるために行うのが嚥下機能検査です。

 

そのうちの一つで在宅で行える検査が嚥下内視鏡検査(VE)です。

 

この嚥下内視鏡検査がどんなものかは、また別の回できちんとお話しします。

 

歯科医師も嚥下機能を診断するために内視鏡検査を行うことができます。

 

「最近うちのおじいちゃん、口をずっとモグモグしてなかなか飲み込まなくなった」

「食事中に何度もむせる、喉に引っかかることが増えた」

 

こんな症状が気になっている方は嚥下機能検査を行っている訪問歯科や訪問の医科のクリニックにお問い合わせください。

 

 

ここまで読んで、

じゃ通院と全く同じじゃん!!

と思ったと思いますが、クリニックで用いる椅子がないという環境上、通院の場合と全く同じ治療方針とはならないこともありますので、その点はご理解いただければと思います。

 

 

どんな人が対象になるのか

訪問歯科はもちろん誰でも受けられるわけではなく、基本的には要介護認定を受けている方が対象となります。

 

ただし、歯科医院へのアクセスが悪く、ご高齢で通院が困難な方など、医療保険だけで対応できる場合もあります。

 

保険診療ではクリニックから半径16km圏内まで往診可能となっていますが、実際どの範囲まで往診しているかはクリニックによるので、往診可能かはクリニックに確認した方がいいでしょう。

 

訪問歯科をご希望の場合は直接クリニックに連絡するか、要介護認定を受けている方の場合はケアマネジャーさんに相談して紹介していただくといいと思います。

 

訪問歯科診療にかかる費用

例として、

  • 訪問歯科に医療保険介護保険を両方適応
  • 医療が2割負担、介護が1割負担
  • ご自宅で患者様がお一人

の場合、診療1回につき、

 

医療保険の訪問歯科診療の再診料:2200円

介護保険の再診料:約900円

(2020/5/28現在)

 

これに処置料が加わるので、1回あたり平均3500円程度です。

処置料は普通にクリニックに通院する場合と同じです。例えば入れ歯を作った場合は処置料が高くなるので、1回あたりの金額がもっと高くなります。

 

もちろん頻度はご相談して決められます。

 

ご自宅でなく施設や病院で訪問歯科診療を受けられる場合は料金が違うことがありますので、あくまで上記の条件の場合とお考え下さい。

 

 

もっと訪問歯科を利用しよう!

治療内容や料金に関して書きましたが、実際にはここでは書ききれないほど複雑なので、ここに書いてあることはあくまで参考程度です。

 

自分の場合はどうなんだろう?と思った方は、訪問診療を行っているクリニックに直接聞いてみて下さい!

 

少しでもご興味を持っていただけたら幸いです!!